「毎晩飲まないと眠れない」「競馬やパチンコに給料をつぎ込んでしまう」——職場でこうしたサインに気づいたとき、どう対応すれば良いでしょうか。依存症は本人の意志の弱さではなく、脳の病気です。懲戒より先に、正しい理解と支援が必要です。

依存症とはどんな病気か——脳のメカニズムから理解する

アルコール依存症やギャンブル依存症(ギャンブル障害)は、脳の報酬系回路(ドーパミンによる快感システム)が繰り返しの刺激によって変容し、自分の意志でコントロールできなくなる状態です。WHO(世界保健機関)はギャンブル障害を2019年に国際疾病分類に正式に位置づけています。
職場での影響は深刻で、遅刻・欠勤の増加、業務中のミス、金銭的な問題による横領リスクなど、組織全体に影響が及ぶことがあります。「本人がやめたいと思えばやめられる」という誤解が、支援の遅れにつながります。依存症の人は「やめたいのにやめられない」という苦しさを抱えており、叱責しても回復には繋がりません。

職場が気づくべきサインと初期対応

アルコール依存症の初期サインには、朝から酒のにおいがする、昼休みに飲酒する、翌日まで記憶がないといった行動変化があります。ギャンブル依存症では、給与日後すぐに金銭的な困窮を訴える、借金の相談をする、勤怠の乱れが目立つといった変化が現れます。
管理職が「様子がおかしい」と感じたら、まず産業医や人事に情報を共有することが大切です。直接「依存症では?」と問い詰めると本人が防衛的になりやすいため、「体調が心配です」「最近しんどそうに見えます」という言葉で、産業医面談への誘導を試みましょう。

支援の形と企業が取るべきスタンス

産業医面談では、本人の状況を把握した上で、専門機関(専門クリニック、自助グループなど)への繋ぎ役を担います。企業として重要なのは、「病気として支援する姿勢」を保ちながら、業務上の問題行動(就業規則違反)とは切り分けて対応することです。
治療に取り組む姿勢がある社員に対しては、休職・時短勤務などの支援体制を整えることが、長期的な回復と復職を後押しします。懲戒解雇は最後の手段であり、まず専門家の助けを借りることが先決です。