「休職中の給与はどうなるの?」「傷病手当金って何ですか?」——休職が決まった瞬間、社員から必ずといっていいほどこの質問が出ます。制度を正しく理解していない人事担当者も多く、曖昧な説明でかえって不安を与えてしまうことも少なくありません。今回は傷病手当金の仕組みを、人事担当者が社員に説明できるレベルで解説します。

傷病手当金とは——制度の概要と支給対象

傷病手当金は、健康保険法に基づき、病気や怪我(精神疾患を含む)で仕事を休んだ際に、生活費を補填するために健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)から給付される手当です。

支給要件:①健康保険の被保険者であること(扶養家族は対象外)、②業務外の病気やケガで療養中であること(業務上のものは労災保険が対象)、③連続3日間の待期期間(有給・無給を問わず)があること、④4日目以降の休業に対して支給される。

支給額:支給開始日以前12ヵ月の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3(3分の2)が1日あたりの支給額です。おおよそ月給の約67%が支給される計算になります。

支給期間:支給開始日から通算1年6ヵ月(2022年1月改正により「通算」方式に変更。途中で就労した期間は加算される形で、最大1年6ヵ月まで支給可能)。

対象となるのは被保険者本人です。派遣社員・パートタイム労働者でも、社会保険加入者であれば対象となります。また、退職前に傷病手当金を受給していた場合、一定の条件のもとで退職後も継続して受給できるケースがあります。

申請の流れと人事・会社の役割

傷病手当金の申請は被保険者(本人)が行うものですが、事業主(会社)は申請書への証明記入という形で関与します。

申請書の構成:傷病手当金申請書は「被保険者(本人)記入欄」「事業主(会社)記入欄」「療養担当者(医師)記入欄」の3部構成です。人事は「事業主記入欄」に、休業した期間と給与の支払い状況を証明します。

申請タイミング:月ごとに申請するケースが一般的です。休職が長期にわたる場合は、毎月申請書を作成することになります。

よくある誤解と正しい説明

①「会社が傷病手当金を払う」という誤解→実際は健康保険組合・協会けんぽから直接本人の口座に振り込まれます。会社は支払いの主体ではありません。

②「休職したらすぐもらえる」という誤解→待期期間(連続3日)の後、4日目から支給対象となります。有給休暇を消化している期間は、給与が支払われているため傷病手当金が支給されません。

③「傷病手当金と給与を同時にもらえる」という誤解→給与が支払われた日は傷病手当金が支給されないか、差額のみの支給となります(減額調整あり)。

④「ボーナスも傷病手当金に影響する」という誤解→傷病手当金の計算基礎は「標準報酬月額」であり、賞与は含まれません。

人事が知っておくべき注意点と社員への伝え方

有給休暇の使い方について:待期期間(最初の3日)を有給で消化することは本人の選択ですが、傷病手当金の受給は4日目以降です。有給を使い切ってから傷病手当金を受給するケースが多く、「いつから傷病手当金がもらえるか」を本人が把握できるよう説明しましょう。

社会保険料の納付:休職中も社会保険料(健康保険・厚生年金)は継続して発生します。会社負担分・本人負担分ともに続くため、「休職中の保険料をどう徴収するか」(月末に口座振替・後払いなど)をあらかじめ就業規則や社内規程に定めておきましょう。

退職後の継続受給:退職前から傷病手当金を受給していた場合、退職後も支給開始日から通算した残余期間について継続受給が可能です(被保険者期間が継続して1年以上あることなど条件あり)。

社員への説明の工夫:詳細は協会けんぽや加入健保のホームページで確認するよう案内しつつ、人事からは「月給の約2/3が最長1年半支給される」という概要を先に伝えることで、安心感を提供できます。明日から試せることとして、「休職案内資料に傷病手当金の概要1ページを追加する」ことをお勧めします。

まとめ

傷病手当金は、休職社員の生活を支える大切なセーフティネットです。制度を正しく理解し、社員に適切に伝えることは、人事担当者として果たすべき重要な役割の一つです。「休んでも生活できる」という安心感があることで、社員は安心して療養に専念でき、回復も早まります。手続きの煩雑さを恐れず、まずは自社が加入する健康保険の窓口に一度問い合わせてみることから始めてみてください。