「ストレスチェックは毎年やっているが、何となく実施してしまっている」——そんな声は人事担当者から多く聞こえてきます。従業員50人以上の事業場に義務づけられているストレスチェック制度ですが、「正しくやれているか」を確認できている企業は意外に少ないのです。実施方法・費用・委託先の選び方まで、基礎から丁寧に解説します。
ストレスチェック制度とは——誰が、何を、いつやるのか
ストレスチェック制度は、労働安全衛生法第66条の10に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場に年1回の実施が義務づけられています(50人未満は努力義務)。
対象者:正社員だけでなく、週30時間以上勤務するパートタイム労働者なども含まれます。派遣社員は派遣元事業場での実施が義務です。
実施者:ストレスチェックを実施できるのは、①医師(産業医など)、②保健師、③一定の研修を修了した看護師・精神保健福祉士・公認心理師のいずれかです。「実施者」は調査票を配るだけでなく、高ストレス者の認定や面接指導の要否判定まで担います。
調査票:57項目の「職業性ストレス簡易調査票」が標準的ですが、企業が独自に追加項目を設けることも可能です。
スケジュール:結果通知から3ヵ月以内に、高ストレス者が産業医への面接指導を申し出できる期間を設けます。面接指導は、高ストレス者と判定され本人が希望した場合に産業医が実施します。実施結果の個人票は5年間の保存が義務で、第三者(企業)が個人の結果を確認するには本人の同意が必要です。
費用と外部委託先の選び方——コストと質のバランスを見極める
ストレスチェックを外部機関に委託する場合の費用は、1名あたり500〜3,000円程度が一般的です。従業員200名の場合、年間10〜60万円の幅があります。費用の差は「オプションサービスの有無」「紙・Web対応の違い」「集団分析レポートの充実度」などによります。
委託先を選ぶ際のポイントは以下のとおりです。
①実施者資格の確認:産業医・保健師等の有資格者が実施者として関与しているかを確認します。「サービス会社のスタッフが対応」という場合は法的要件を満たさない可能性があります。
②調査票の選択肢:57項目の標準調査票に対応しているか、企業独自の追加項目に対応できるかを確認します。
③集団分析の質:部署別・年代別などのクロス集計が可能か、レポートが読みやすいかを確認します。集団分析は職場環境改善の出発点となるため、特に重視してください。
④高ストレス者への対応支援:高ストレス者への案内文の作成支援、面接指導を担う産業医の紹介など、アフターサポートの充実度を確認します。
⑤個人情報の取り扱い:ISO27001(情報セキュリティ)やプライバシーマーク取得など、情報管理体制が明確かを確認します。ストレスチェックの結果は機微な個人情報であり、漏洩リスクの低い委託先を選ぶことが重要です。
受検率を上げる工夫と「やりっぱなし」を防ぐ運用のコツ
法令上は実施義務ですが、受検を強制することは禁じられています。しかし受検率が低いと、特に高リスク者を把握できないという問題が生じます。受検率向上のためのポイントを紹介します。
受検率を上げる工夫
①Webで実施する(紙よりも手軽で結果の把握が速い)、②実施時期を繁忙期と重ならないよう調整する、③「結果は会社に筒抜けにならない」という個人情報保護の説明を徹底する、④管理職が率先して受検する姿勢を見せる。
結果を活かす運用
ストレスチェックの最大の目的は「高ストレス者への早期対応」と「職場環境改善」の2点です。高ストレス者への面接指導につなぐフローを事前に整備し、集団分析の結果は衛生委員会に報告して職場環境改善の議論に活用しましょう。「実施して終わり」では義務を果たしただけで、制度の意義が活きていません。
明日から試せることとして、「過去のストレスチェック集団分析報告書を引っ張り出して、高ストレス部署がどこか確認する」ことから始めてみてください。
まとめ
ストレスチェック制度は、実施すること自体が目的ではなく、その結果を職場改善と個人支援に活かすことに意義があります。法令の義務を正しく理解し、外部委託先を吟味し、集団分析を活かした改善サイクルを回すことで、ストレスチェックは「形式的な年中行事」から「職場を変えるツール」に変わります。産業医と連携しながら、今年のストレスチェックを職場改善の第一歩にしてみてください。